紙と皿のあいだ

本の感想とドールや猫の写真とか

最近読んだ本

ことぶきつかさ作のスピンオフ。
サイド3に一年戦争展が新設されることになり、カイ・シデンが開催間際にオブザーバーを引き受けるのだが……という流れからカイが当時のWBでの生活を振り返る、ドキュメント風の作品。
あまり期待せずに読んだら、なかなかの佳作だった。
地味なマンガが好きな人にはおすすめ。*1

「カイメモ」が面白かったので同作者&同様の構成である「カイレポ」も購入してみたんだが、こちらはいまいちだった。
劇場版Z公開に合わせての飛び飛び連載だったらしいんだが、カイメモほど絵柄が安彦キャラとマッチしていないこと、ストーリーが単純に面白味に欠けることなど欠点の方が目に付く。というか、絵に関してはカイメモの方が飛び抜けて良かったのかもしれない。良い感じに肉肉しく、線には個性も残り、って具合で素晴らしい。
まあ、ガンダムの同人誌として読めば及第点なのかもしれないんだけれど、どうにも盛り上がりがない。


一巻が99円だったので購入。
朝起きたら憧れのJKの中に入ってた!という入れ替わり型TSもの。
押見修造の男キャラの気持ち悪さは外見が変わっても変わらず、やはり気持ちが悪い。(褒めている)
サスペンス調で続きが気になる。


津原泰水の短編SFをマンガ化。
あっさりとした画風ながら、作品世界と空気感がとてもマッチしていて違和感が無かった。
読後の切ない余韻は原作と同様のものを感じる。良質なコミカライズ。


★5
Twitterでも散々呟いていたけれど、大変よかった。
テキストサイト時代の原住民たちのどうにもならない日々を綴った青春小説。
あの頃のアングラでほの暗く酸素の薄い、蛍光灯だけが照らし出す世界が見事に文章化されている。
エロゲテキスト文化圏&文フリ大好き人間は当然既読だと思いますが、まだ未読の人は図書館ででもいいからさっさと予約入れて読みましょう。

そういえば、海猫沢めろんのデビュー作も復刊されるらしい。

これな。
星海社にはなんだかんだで感謝しないといけない。


ゆうきまさみの新連載。
不老不死の人間がいる世界で起きる怪事件を追うミステリらしいが、1巻だけではどうにも判断できないといった始まり方。
ショタジジイの口がでかすぎるのはワザとだと思うが、それにしてもでかすぎないか。


彼女とカメラと彼女の季節(4)

彼女とカメラと彼女の季節(4)

百合エンドくるのか。


あとがきが一番面白い。
この作者はキャラが好きすぎるのと少女漫画的浪花節描写が強すぎるのが玉に瑕すぎると思う。
この手の未来史譚は無残かつ無慈悲に虐殺していかないと読んでいる方もうんざりするんで、アッサリと描いてくれないもんだろうか。
絵柄とネタは好きだけど作風は嫌いなタイプの作家なのかもしれない。


偉大な記憶力の物語――ある記憶術者の精神生活 (岩波現代文庫)

偉大な記憶力の物語――ある記憶術者の精神生活 (岩波現代文庫)

前世紀の神経心理学者のレポート。
タイトルにある記憶術者が記憶術を生業にする以前から、30年にわたる研究成果をまとめた一冊。
しかし本題は記憶力ではなく味覚・視覚・聴覚の五感のほぼすべてに重なっている共感覚の方だろう。
強力すぎる共感覚を通して世界を見ることが一体どのようなものなのか、文章として読むだけで想像を絶した光景にクラクラする。
円城塔「良い夜を待っている」の元ネタ本だと思われるんだけれど、あっちを読んでいる時には理解できなかった様々な描写がこれを読んで「そういうことだったのか!」と腑に落ちた。
脳関係では有名な本だけれど、やはり面白い。


穴

本棚にあったのでなんとなく読む。
面白かったんだけれど、良い文学にありがちな小さなフレーズに共感を覚えるタイプの作品なので大ざっぱにまとめる方が骨が折れる。
表題作の不穏さは良い。


楽しいみんなの写真 -とにかく撮る、flickrで見る。ソーシャルメディア時代の写真の撮り方・楽しみ方

楽しいみんなの写真 -とにかく撮る、flickrで見る。ソーシャルメディア時代の写真の撮り方・楽しみ方

SNS時代における写真の在り方とはいかなるものかを語る一冊。
一昨年の本なので情報は古いが、銀塩がデジタルに切り替わった頃、そして共有することが当たり前になった現在とで写真への接し方がどう変化したのか、分析がいちいち頷けて面白かった。
flickr の基本的な使い方(ただしデータは古い)、ワークショップの記録、震災におけるストレージの価値など。実際に今までとこれからとでは写真のあり方が大きく違うのだということが知れる。
↑では略されちゃってますが大山顕との共著であることによって視点が多角的になることも、"共有される写真”を語る上では利点なのかも。
良書。


「自分」整理術 好きなものを100に絞ってみる

「自分」整理術 好きなものを100に絞ってみる

タイトルからしてlifehack的ノウハウが載っているのかと思ったが、そんなことはなくいつもの山崎まどかエッセイ集だった。
ここまで煮詰まっているとNYに住め!と言いたくなる。
雑誌&webライターとしての山崎まどかは嫌いじゃないどころか大好きなんですけどね…。

*1:ただし、当然だが宇宙世紀を知らない人には全く楽しめない