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紙と皿のあいだ

本の感想とドールや猫の写真とか

天国の日々

最近、仕事が比較的忙しく、人形遊びもしていない*1ため写真のストックが切れたので、人形から離れて本の話。ではなくカメラの話。あるいは映画の話。


写真趣味もないのに dp3 merrill というピーキーすぎるカメラを衝動買いしてしまったのはこの記事を読んだからというミーハーな理由なのは、以前にも書いたかもしれない。書いてないかもしれない。
ともあれ、ほぼ日に掲載されているこの写真コラムが私はたいそう好きであり、第三部に入ってからは特に注目していたにも関わらず連載が途絶えている現状を憂いているので、渋谷リブロで単行本を見つけた時もカメラを購入した時と似たような衝動にかられて購入してしまった。

写真がもっと好きになる。 菅原一剛の写真ワークショップ。

写真がもっと好きになる。 菅原一剛の写真ワークショップ。

写真とそれを撮った時の思いを紙に焼き付けたような、じっくりと良い本。
著者の菅原一剛はオタク的にはアニメ「蟲師」のオープニング撮影を手がけた人と言った方が通じるかもしれない。
公式サイトを見たら「GALLERY360°」でも展示会やってるっていうから、結構現代アート的な作品作りもしてるのかな。


本の中で触れられていたトピックスに面白いものがあった。
日が沈んでから天上の光が消えるまでの約20分ほどの「マジックアワー」という時間帯がありまして、このときに写真を撮ると得も言われぬ柔らかな色が捉えられるという。
web連載をまとめた本なので、該当部分は末尾のURLでも読める。*2

映画「天国の日々」は夕方のシーンを全てマジックアワーに撮影することにより、正に天国の名にふさわしいバラ色の絵を作り上げることに成功しているとのこと。
さっそく借りてきて観た。

天国の日々 [DVD]

天国の日々 [DVD]

ともかく映像の美しさがすんばらしい。
撮影監督がトリュフォーとかロメールも担当していた人で、そりゃ全編の画面から感じる仏映画臭も当然といった感じ。
名前をネストール・アルメンドロスと言うんですが、この人の来歴がなかなか面白くて、スペイン生まれのキューバ育ちだが革命後にプロパガンダ映像ばかり作らされるのに嫌気が差してフランスに旅立ち、たまたまロメールのスタジオに訪れたら前日にカメラマンが監督とケンカして降板していて代理をいきなり試されるなど、エピソードに事欠かない。
ちなみに、この作品で1回目のアカデミー撮影賞を受賞しているとのこと。

夕焼けシーンの美しさについては言を重ねるには及ばないが、後半のイナゴ襲来シーンの迫力と絶望感も相当なものがある。CGがなかった頃の、特に自然撮影に拘りを持ったスタッフが撮ったというのだから尚更だ。
シナリオは古典的というかぶっちゃけ陳腐なものを(個人的には)感じるんだけど、それを映像の雄弁さが補ってあまりある。
「実際にこういうことが起きちゃったんだから仕方が無いよね」というリアリズムの力強さの前では、陳腐だとかひねりがないとか批判する言葉の方が力を失する有り様だ。

キャメラを持った男 (リュミエール叢書)

キャメラを持った男 (リュミエール叢書)

アルメンドロスが関わってる作品は他にはこれくらいしか見たことがないけど、話的にはこっちの方が断然好きだった。

*1:Flickrで検索しまくってるけど

*2:ほぼ日刊イトイ新聞 - 写真がもっと好きになる。菅原一剛の写真ワークショップ。 http://www.1101.com/photograph/2006-03-10.html